昨日昼、友人のたもっちゃんが大きな荷物を抱えて病室にやって来た。
たもっちゃんは会津田島で床屋を営む。
母の一番下の弟(大山豊・よってんべ店主)の後輩で私より8歳年上だ。
高校生の頃からお世話になっている。今では田島に帰るとマリ子もお世話になる。
腕は抜群。今でも定期的に東京まで勉強に通われている。努力の人だ。
母が髪の毛を切りたいというので看護師さんに相談した。入院してまだ一度しか切っていなかった。
「いいですよ」。許可を頂いた。
マリ子がたもっちゃんに電話すると喜んで引き受けてくれた。
たもっちゃんの姿を見て母も喜んだ。朝からたもっちゃんを待っていた。
ベッドの位置を動かして、たもっちゃんが立てるスペースを確保した。ベッドの頭の部分を持ち上げた。母の頭も上がった。
鋏の音が心地よい。長く伸びた母の白髪交じりの髪の毛がベッドの周りに広がった。
たもっちゃんはどちらかというと無口だが母の話に笑顔でうなずきながら鋏を操った。母も笑顔で会話した。
「たもっちゃんありがとう」。母が口パクした。たもっちゃんはエッ?という表情を浮かべたが直にマリ子が通訳した。
「とんでもありません」。たもっちゃんが笑顔で応えた。
「田島で待っています」と言って母の手を握った。
涙がこぼれた。
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