「どんな仕事でも大変じゃない仕事はないよ」

乗客１０６名が犠牲となったＪＲ福知山線の脱線事故は４月２５日発生から丸８年を迎えた。遺族の悲しみは歳月が過ぎても癒されることはないだろう。

　ちょうどその年の４月、長男大輔がＫＡ教育に入社した。本人は消防士か警察官になることが夢だった。が試験の結果は不合格。夢実現に向けて本人なりに精いっぱい頑張った。親としても気の毒に思えた。国税専門官は合格していたが気乗りしない様子であった。これからのことを相談に来た大輔に「就職浪人だけは認めない。国税専門官にならないならお父さんの会社に来てはどうか」と伝えた。就職難の時期、正直心配だった。親の気持ちを理解してか「わかりました」。早速紳士服店に行ってスーツをプレゼントした。就職祝いだ。マリ子（妻）も喜んだ。

　ＫＡ教育は４月から６月が一年で最も忙しい。何も教えることも出来ないまま一緒に学校に伺った。お世話になっている先生方に紹介した。どの先生も名刺を見て「息子さんですか。お父さんと一緒に頑張って下さいね」と優しく励まして頂いた。大輔も「ありがとうございます。よろしくおお願いします」とお礼を述べた。まじめで礼儀正しいことが何より嬉しかった。生徒対象研修会、保護者対象講演会など見学させた。近い将来大輔にも出来るようになって欲しかった。

　４月２５日、大輔と妻を連れて小松原高校へ伺った。仕事を終え３人で焼肉店に入った。昼過ぎであったが仕事開始からもう７時間も経過していた。この日は次の学校もなかったので３人で乾杯した。大輔がＫＡ教育に入社して初めてだ。大輔はビールを飲むとすぐに赤くなった。その時テレビに福知山線の脱線事故のニュースが流れた。衝撃的な出来事に３人して驚いた。

　その後大輔は補欠だった消防士に合格しその道を選んだ。当然だ。夢が実現した。週に２、３日泊りがあるだけでも大変だ。多い時は一晩で数回現場に出動するという。先日食事をしたとき「大変だな。よく頑張っているな」と声をかけた。「どんな仕事でも大変じゃない仕事はないよ」と。成長したな。嬉しかった。大輔が消防士の道を選んだ時は正直寂しかった。一緒に働きたかった。でもこんなに成長させて頂いた大輔を見て消防士になってよかったと心底思う。

　あの日仕事帰りに３人で乾杯したことは今ではいい思い出だ。

Comments

[投稿情報: TMB]

たとえ遠回りだとしても、自分の夢や目標を叶えられるように日々、一歩ずつ歩いていきたいです。

[投稿情報: tivit]

どんな道を辿ったとしても最終的に夢を達成していきたいと思いました。そのために今目の前にあることに一生懸命に向き合いたいです。

[投稿情報: iいちご]

責任感のある青年。
頼もしく思う。
無事故、健康を祈る。